今や 手に入りにくい本物イカット
13500余りの島々からなるインドネシアには、それぞれの地域性、独自性によるイカット布が受け継がれてきました。 それぞれの民族にとってこの布は衣類としては勿論の事、冠婚葬祭時の儀礼用としても、大きな役割を果たしてきました。豪華な布を所有することは社会的地位をあらわし、先祖代々受け継がれ、家宝として大切に保管されてきました。 現在、機械生産されたものは、多く出回っておりますが、ここにご紹介させていただくものはすべて手作業で作られたイカットです。綿を紡ぎ、紡いだ糸を機にかけ、糸をすこしずつ括り天然染料で染め、それを乾かした後、括った糸を解くという作業を何度も繰り返し最後に織り上げて模様を描き出します。女性達が誰のために、何のために、それぞれの思いや願いを込めて長い工程を経て織られるイカットは数年かかってやっと一枚を織り上げることができる貴重なものです。
イカットを織るインドネシアの島々
インドネシアの伝統的手織り布であるイカットはインドネシア語でikat(縛る、括る)から由来した絣布のことを指します。そして経糸を括り染色した後(括られた部分には色が入りません) 織りモチーフを描き出す経絣、緯糸を括り染色した後、織り上げ文様を描き出す緯絣、経糸と緯糸それぞれを括り染色した後 織り上げて 文様を描き出す 非常に高度な技術を必要とするダブルイカットがあります。それぞれの島、民族が持つ信仰や思想などにより特徴のある文様や手織り布があります。13500余りの島を持つインドネシアはイカットの宝庫です。
カリウダ村に独特の佇まいで建っている家にまだ機にかけたままのイカットが置いてある素敵な写真です。カリウダ村の特徴である茜色の綺麗な赤いイカットが映えています。布はスンバ人にとって人生の大切な場面になくてはならない神聖なものです。
イカットを織るには木枠に整経された糸をモチーフを描くために括る工程があります。色が染み込まないように括る作業には昔からヤシの葉を細く裂いて紐状にしたものを使います。キツく縛らなければなりませんので男の人が作業する事も多いのです。
ドルメン(いくつかの支柱石で大きい石をささえた形の墓)の上にモチーフをイメージした括り作業後染料につけた糸の束を干しています。染色は気に入った色になるまで何回も繰り返しそめますので大変長い時間を要します。
中央に経絣、両サイドに紋織で織り込んでいます。紋織の部分は少し太めの糸で織られパヒクンと呼ばれています。この紋織を織り込む見本は支配階級の所有物でしたのでこの紋織が施されたイカットは限られた階級の人が着用したようです。
船の形をした独特の家(トンコナン)に住み 自然宗教の中で生きている人が多い特異な文化を持つトラジャ人。そこで織られる布は鈎の組み合わせ、割れた菱形モチーフ、鈎の形の幾何学的文様、先祖の抽象をした人型等を四色で描かれています。
タナ・トラジャ地方の景色
トラジャ族は特徴的な家屋に住んでいるだけでなく 死葬儀式も独特なものです。岩壁に沢山の墓穴が開けられていますがそこに埋葬されます。その入り口にはお守り(?)として人形が飾られます。
フローレス島から船でやっと辿り着く捕鯨で有名なレンバタ島の布は 島で採れる綿花から糸をつくり 木の皮、根など植物から染める液を作り染色します。島の女性は器用に歩きながらでも糸を作ります。品のあるシックな色合いは日本の住宅にもよく馴染みます。
括り作業後染色された糸やその後乾いて解かれた糸の束が庭先にかけてあります。この工程を何回が繰り返し目的の色を作り出します。
フローレス島の軒下で素朴な腰機でイカットを織っている女性です。一家の冠婚葬祭に使うための布、家族が纏う布、現金収入を得るための布などイカットが果たす役割は大変重要です。シッカ村で女性が織っているイカットはワイン色、茶色濃淡の素敵な布でした。
フローレス島シッカ村でイカットを織る女性です。細かく糸括りされてモチーフもくっきりと描かれていました。モチーフやその配置は各家庭で決まっていてどこの家のイカットかわかるとの事でした。この女性は熟練した織り手だそうです。
モチーフをイメージしながら糸をイカットする作業を見学する中島。大変根気のいる作業です。
織り手が自慢のイカットを並べて見せてくれました。一枚一枚纏う人のために長い時間をかけて手織りしたのでしょう。
ティモール島ソエ近くの村の小学校です。貧しい環境の中でも笑顔が光ります。小さい頃からイカット製作工程を身近に見て手伝いもしているので 何人かでもイカット製作を継承してくれたらいいなと思います。
ソエから各村へ移動する際にいくつも建っていた民家です。軒下で布を織っている姿も見られました。
ボティ村に入村する際の村長への土産としてSirihを携え許可を得て入村することができました。綿花を手紡ぎし、村に生えている植物から抽出した染料で染め素朴な腰機で織っていました。モチーフは5種類あり組み合わせて織り込んでいるそうです。赤ちゃんから大人まで皆ボティ村のイカットを身につけていて圧巻でした。
バリ島トゥガナン村で織られている経緯絣ダブルイカット(グリンシン)です。病気、災難から守ってくれる"神の布"と言われている特別な布です。特別な染料で染め 経緯の織糸を丁寧に微調整しながら打ち込む大変高度な技術が求められます。
トゥガナン村の家並です。同じたたずまいの家が並び 村の中心部には大切な儀式、祭り、共同作業などが行われる舞台のような場所があります。
当社のイカットをお店に使って頂きました
イカットのご購入者様から素敵な写真が送られてきました。
イカットをおしゃれなインテリアとしてお使いいただいて
本当に嬉しくお礼を申し上げます。
島々のイカットの特徴
スンバ島のイカット
スンバのイカットはインドネシアの織物文化を代表するものです。19世紀にオランダ人によって「発見」され、世界中に注目されました。貴重な染織は神聖な宝物と同様 屋根裏部屋に保存され現在にいたっています。スンバ染織のモチーフには ワニ、ウマ、シカ、ニワトリヘビなどの動物や鳥、首架台、宝石など、またインドとの通商を通して入ってきた布から派生した幾何学文様などから構成されています。階級により使用できるモチーフも違い、それぞれの織り手の人生を語るにふさわしい、すばらしい布です。 スンバ島のイカット一覧
ティモール島のイカット
ティモール島のイカットはカラフルな縞で装飾されたものが多いのですが、色彩、技法、モチーフ、デザインが多種多様で説明することがむずかしいです。鶏,樫の葉、ブドウの房などポルトガルの影響を多くうけているモチーフもあります。また隔離された村などで織られた布などには独特なモチーフがあり、興味をそそられます。補助縦糸で表わされる明るい色調は輸入品を容易に手にいれることができる海岸部の特徴でもあるようです。 ティモール島のイカット一覧
フローレス島のイカット
この島のイカットの色調は赤茶色と濃紺色で、モチーフは通常小さい幾何学文様がアレンジされています。ほの暗い、控えめです。その中でも各地方ごとに小さい象や馬などが反復してならんでいたりします。和家具などとも相性の良い、品のあるイカットです。 フローレス島のイカット一覧
レンバタ島のイカット
レンバタ島はフローレス島の東に連なるソロール諸島の島のひとつで捕鯨で有名な島です。この島のイカットの特徴としては 他の島で織られているイカットのような華やかさはありませんが 濃茶、藍、赤茶など地味な色合いで織られている大変品のある織物です。描かれているモチーフは 点描模様、小さい幾何学模様、控えめにアレンジされたパトラ模様など また鯨の形も描かれています。現地では素晴らしいイカットは結婚衣装として また婚資としての価値を高めるものとして大変重要な存在です。 レンバタ島のイカット一覧
サウ島、ライジュア島、ロティ島のイカット
サウ島のイカットは藍色地に白のモチーフがあり 部分的にサンゴ色が織り込まれています。デザインは帯状になっていて、花や幾何学文様が繰り返されています。ロティ島はインドの交易によってもたらされた花やつぼみなどのモチーフをつかっているものが多いです。濃紺、黄色がかった白、赤、稀に黄色もあります。 サウ島、ライジュア島、ロティ島のイカット一覧
スマトラ島のイカット
スマトラのイカットは幾多の民族による木綿の経絣、絹の緯絣、木綿、絹併用絣など特徴のあるイカットが織られています。インドネシアのイカットは木綿が多いのですが スマトラ島のアチェやパレンバンなどでは絹糸を使用したイカットも織られています。ランプンの織物は一般的に霊船布と呼ばれています。いろいろな文様が浮織りで描かれています。文様は綿糸、絹糸で織り込まれています。 スマトラ島のイカット一覧
スラウェシ島のイカット
木綿の経絣布が中心のイカットです。儀礼用として用いられるために織られている布が多く、トラジヤのイカットのモチーフは鉤状の幾何学模様の組み合わせが多いです。特に住居、暮らし方特にお葬式など独特な文化が残っている地域で、イカットのモチーフもそれぞれ意味を持っています。
JITAで出しているものはトラジヤ人のイカットのみです。
スラウェシ島のイカット一覧
壁に掛けたり、棚上などのクロスやテーブルクロス、ベッドカバーなどに使って頂けます。
木の棒やイカットハンガーなど使って壁に吊るすと雰囲気のあるお部屋になります。